禅ぱん

自家製酵母でつくるベーグルとおやつ

土曜日の女の子ときなこクッキー

もうずいぶんと長いこと、きなこクッキーを買い続けてくれている女の子がいます。

その子は必ず土曜日にやってきます。

お父さんと一緒にやってきます。

実は女の子というには申し訳ないぐらい素敵な女性なんだけど、多分高校生くらいかしら?

私からみたらやっぱりまだかわいい感じがして、あえて女の子と呼ばせてもらっています。

 

私はその子に一目惚れしました。

何故だかよく分からないけど、たぶん何か、自分と同じような雰囲気を感じたから、かな。

女の子はゆっくりと、商品を眺めます。静かに眺めます。

そして小さいけれど、しっかりとした口調で『きなこクッキーを』と言います。

必ず『きなこクッキーを』と。

私も静かにきなこクッキーをひとつ、つまみ上げます。

私もきなこクッキーが好きなんですよ、とは言いませんが、心の中でそう言いながらつまみ上げます。

 

女の子が好きです。

たくさんお客さんはいらっしゃるのに、何故だかその子だけとても気になります。

だから、土曜日には必ずきなこクッキーがお店に並びます。

いろいろあってそれが出来なかった時、私は情けない気持ちになります。

そんな土曜日に限って女の子が来たりしたら、、、とても惨めな気持ちになります。

ごめんなさいね、とは言いませんが、心の中でそう言っています。

だから、土曜日には必ずきなこクッキーをお店に並べたいんです。

女の子のためだけではなく、私のためにも。

いつか女の子が大人になって、きなこクッキーを卒業する日がくるかもしれないけど、

その時まで、土曜日には必ずきなこクッキーをお店に並べたいんです。

 

 

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